メディア掲載

株式会社TKC発行の企業向け情報誌「戦略経営者」2024年8月号に掲載されました!

「戦略経営者」2024年8月号

株式会社TKC発行の企業向け情報誌「戦略経営者」2024年8月号に当事務所のお客様である、エースカーゴ株式会社様がご紹介されました。

特集 生産性向上で働き方が変わる

 Opening Report 

残業平均19時間/月、全員有休7日以上取得

労働環境を大幅に改善した物流会社

大型の家電や家具を2人1組で配送し、顧客宅での取り付け・設置まで担う“技術物流”を手がけるエースカーゴは、輸送体制の改革とIT化で業務効率を大きく改善させた。山中泰宏社長は「過重労働が解消したことで、社内の雰囲気が変わり、従業員の表情も明るくなりました」と語る。

  エースカーゴ株式会社

業種  物流業
創業  1991年4月
所在地 滋賀県野洲市妙光寺149-2
売上高 17億5000万円
社員数 52名
会計システム FX4クラウド

エースカーゴ株式会社

中嶋辰也会長を中央に、右が山中泰宏社長、左が中嶋正次部長

 日に日に暑さが増しつつある初夏の夕暮れ時。時計の短針が“6”を指すと、作業服姿の従業員が続々と事務室に現れた。エースカーゴのトラックドライバーである。
「お先に失礼します」
 打刻を終え、家路につくドライバーの表情は朗らかだ。

共同配送にシフトする

「当社の1カ月あたりの平均残業時間は、ドライバーが19.1時間、内勤のスタッフが11.5時間と業界でも低い水準を保っています。有給休暇の取得も積極的に推進しており、全従業員が毎年7日以上取得しています。『給料を多く稼ぎたい』というドライバーもいますが、有休の取得を奨励することで過重労働に歯止めをかけています」
 企画開発部の中嶋正次部長がこう語るように、同社ではワーク・ライフ・バランスを重視した経営を実践しており、業績の拡大や従業員の定着、採用希望者の増加といった好循環が生まれている。巷間(こうかん)叫ばれている「2024年問題」にも対応できているが、今の職場環境は一朝一夕に確立できたわけではない。以前は非効率な業務が山積し、労働時間も長時間に及んでいたという。
「長時間労働を理由に、ドライバー数人が一斉に退職をほのめかしたことが、職場環境の改善に取り組んだきっかけです」
 山中泰宏社長はこう述懐する。
 長時間労働が常態化していた原因の一つに、地理的な特徴がある。同社が拠点を置く滋賀県の中心には琵琶湖があることから、県内の移動に時間を要してしまうのだ。例えば、県東に位置する米原市と北西部にある高島市は直線距離で30キロ程度だが、実際は琵琶湖に沿って北上する必要があるため、その道のりは約60キロと、直線距離と比べて2倍近く伸びてしまう。
 移動距離が長くなればなるほど、ドライバーの労働時間も長くなる。特に、同社は大型の家電・家具の輸送に特化しており、輸送だけでなく取り付けも担う“技術物流”を事業の軸としていることから、荷物の量が増えるにつれてドライバーの負担も重くなっていった。

輸送から設置まで請け負う“技術物流” で業界をけん引

輸送から設置まで請け負う“技術物流” で業界をけん引

輸送から設置まで請け負う“技術物流” で業界をけん引

輸送から設置まで請け負う“技術物流” で業界をけん引

 こうした課題を解決するために取り組んだのが、共同配送の導入である。
 山中社長は続けて言う。
「荷主である量販店や販売店ごとにトラックを配備していたところを、湖東・湖西・湖南・湖北とエリアごとに配備するよう配達のオペレーションを変えたのです。配達先が近隣の製品を1台のトラックで運ぶように変えたことで、ドライバーの業務効率が大幅に改善するとともに長時間労働の是正にもつながりました」
 インターネット通販の台頭や2024年問題への対応を背景に、今でこそ共同配送サービスが浸透し始めているが、当時は荷主ごとにトラックを分けて荷物を運ぶのが当たり前の時代。他社製品との混載に難色を示す荷主は少なくなかったが、山中社長は現在の輸送効率が極めて悪いこと、現在の業務品質を維持するには輸送体制を変える必要があることを資料にまとめ、粘り強く交渉したという。
「滋賀県内で大型の家電・家具の輸送を手がけているのが当社だけだったことや、ドライバーの業務品質を評価いただき、最終的にほぼすべての荷主さんが当社の提案を受け入れてくれました」(山中社長)

ITで管理業務を一元化

 こうして効率的な輸送体制を確立した山中社長は、続いて管理業務にメスを入れる。ITツールによる管理業務の一元化である。
 同社では伝票処理や配車手続き、入出金管理などを手作業で行っていたが、これらを一元管理するシステムを新たに導入したことで、業務の効率化はもとより、荷物の積み忘れといったヒューマンエラーの防止にもつながった。
「問い合わせの対応に時間がかかったり、荷物の入出庫をリアルタイムで管理できておらず、荷物を倉庫に残した状態でトラックが出発したりするなど、荷主やお客さまに迷惑をかける事態がしばしば発生していました。これらを防ぐために取り組んだのが、IT化の推進です。あるITベンダーさんに、当社の業務フローに即した業務管理システムを開発してもらいました。システムの開発に際し、ものづくり補助金を活用したのですが、申請に関しては大辻税理士法人の美濃部淳先生にも支援していただきました」(山中社長)
 最近は従業員向けにチャットツールを導入。ドライバーどうしで配達状況をリアルタイムで共有するなど、積極的に活用している。
「当社ではドライバー部門に班制度を導入しており、同じ班のメンバーどうしが配達状況をリアルタイムで共有する習慣が根づいています。手の空いているドライバーが別のドライバーの配達業務を積極的にサポートすることで、業務量の平準化が図られています」と、山中社長はITツールによる業務の効率化に、確かな手ごたえを感じているようだ。
 かくして日常業務の効率化と平準化を実現した同社。現在は社内の戦略会議やミーティング、ドライバーの技能研修など、会社の将来を左右する業務に十分な時間を充てることができているという。

従業員向けの教育研修や今後の成長戦略に関するミーティングなど、会社の未来に向き合う時間も十分に確保

従業員向けの教育研修や今後の成長戦略に関するミーティングなど、会社の未来に向き合う時間も十分に確保

ノウハウを全国に普及

従業員向けの教育研修や今後の成長戦略に関するミーティングなど、会社の未来に向き合う時間も十分に確保

従業員向けの教育研修や今後の成長戦略に関するミーティングなど、会社の未来に向き合う時間も十分に確保

「『将来のことで迷ったら、難しい方を選びなさい』というのが会長(中嶋辰也氏)の教えです。当社は『技術物流インフラを担っている』という使命感のもと、今後もさまざまな事業にトライしていきたいと考えています」
 そう話す山中社長がいま力を注いでいるのが、全国の協力会社へのノウハウの普及だ。同社では、技術物流を手がける全国の物流業者と強固なネットワークを構築しており、業務の委託はもちろん、製品の輸送や設置、内勤業務を高品質かつ効率的に行う方法など、これまでに培ってきたノウハウを協力会社に向けて提供している。
 具体的には、前述の業務管理システムを協力会社にも開放する、山中社長や幹部社員が協力会社のミーティングに参加し、業務改善に向けたアドバイスを行うといった取り組みを実施している。「『社内の体質が改善しました』など、協力会社からうれしい声を聞く機会も増えつつあります」と、山中社長は柔和な面持ちで語る。
 滋賀から日本全国へ──。エースカーゴのメソッドが浸透すれば、物流業界全体の労働環境も、より良い方向へ向かっていくことだろう。

コンサルタントの眼

脈々と受け継がれる“学びを重んじる姿勢”

  大辻税理士法人

滋賀県彦根市平田町410-6(HEAD OFFICE)
滋賀県栗東市下鈎878-1 HAT’S102号(草津事務所)
代表社員税理士 大辻正樹
パートナー税理士/草津事務所所長 美濃部淳 草津事務所監査課 白井衣里

 エースカーゴさまは大型家電・家具の輸送、取り付け・設置を手がける“技術物流”のパイオニアとして、物流業界で確固たる地位を確立しています。
 創業者の中嶋辰也会長は商売に真摯(しんし)に取り組まれてきた方です。学びを重んじる姿勢も印象的で、従業員の成長を大切にする社風は、山中泰宏社長にバトンタッチした現在もしっかりと受け継がれています。その証拠に、従業員教育に関する支出の割合は同業他社と比べて大きいです。
 経営管理の面でも盤石の体制を築いているのが、エースカーゴさまの優れているところです。『FX4クラウド』を利用して日々の経理業務を実施し、業績データを自社の現状把握と経営戦略の立案に役立てています。月次巡回監査で訪問した際も山中社長と必ず面談しており、エースカーゴさまで策定された予算と実績値を比較しながら、売上高や費用項目の動向についてヒアリングし、今後の打ち手をすり合わせています。
 給与計算では『PX2』を長く利用していましたが、今年の3月に『PX4クラウド』にアップデートされました。『PX4クラウド』はエースカーゴさまで使用されている勤怠管理システムと連動しており、給与計算業務のさらなる効率化を実現しています。

大辻税理士法人

大辻税理士を中央に、左が美濃部税理士、右が白井監査担当